News Corp.マードック氏が指摘する「既存メディア衰退の原因」 |
新聞の部数が減少し、事態がますます悪化すると予想されている中、Rupert Murdoch氏は、読者の信頼および忠誠心を失った記者や編集者を振り払うことができれば、業界にはまだ明るい未来があるかもしれないと述べた。
「わたしは、既存メディアがインターネットに対応する方法についてこう考える。つまり、時代遅れになったかもしれないのは、新聞ではないのだと。それはむしろ、読者とのきずなという新聞の最も貴重な財産を忘れている一部の編集者、記者、経営者の方だ」とNews Corp.の会長兼最高経営責任者(CEO)であるMurdoch氏は述べた。同氏のこの発言は、Australian Broadcast Corporationが提供している講演番組の一環として行われたものだ。
MySpaceやWall Street Journalなどを傘下に収めるNews Corp.のMurdoch氏は、一部のニュース編集室での「自己満足と恩着せがましさ」の風潮を批判した。
「自己満足の原因は独占を謳歌(おうか)していたことで、今になって、かつて当たり前のように獲得していた読者を得るために競り勝たなければならないことを知ったということだ。それよりもさらに大きい問題は、多くの編集者や記者、経営者が読者に示す恩着せがましさだ。顧客を軽蔑していたら、いつかなかなか商品を買ってもらえないときがくるのは、誰にでもわかる。新聞も例外ではない」(Murdoch氏)
77歳になるMurdoch氏は、1952年に父親の死によって、Adelaide Newsを引き継がなければならなくなったことから始まった、新聞業界での長いキャリアを思い起こし、業界は、テクノロジによってもたらされた変化に創造的に対応できなかったと述べた。
「かつては、何がニュースで、何がそうではないかを判断できるのは一握りの編集者だけで、彼らは一種の神のように振る舞っていた。彼らが記事を掲載すれば、それがニュースになり、彼らが出来事を無視すれば、その出来事はそもそも起こらなかったことになる。今では、編集者はこのような力を失いつつある。たとえば、インターネットでは、編集者が無視したかもしれない出来事に関する多くの情報源にアクセスできる。そして、それに満足できなければ、自分のブログを立ち上げて、自分でそのニュースを取り上げ、コメントすることができる。ジャーナリストは、自身は番人であると思いがちだが、一般の人々が彼らに説明を求めても、必ずしもきちんと対応してきたとは限らない」(Murdoch氏)
主張の一環として、Murdoch氏は、CBS Newsの元キャスターであったDan Rather氏による、Bush米大統領が州兵時代に兵役を逃れたとする「60 Minutes」の報道のうそをブロガーが暴いたときのメディアの反応を批判した。
「既存メディアは、この市民ジャーナリズムを称賛するどころか、抗戦の構えを取った。Fox Newsに出演したCBS Newsの幹部は、歴史に残るだろうごう慢な発言で、ブロガーを攻撃した。同氏は、『60 Minutes』は『何重にも抑制と均衡』が施されたプロの組織だと述べる一方、ブロガーは『パジャマを着て居間でくつろぎながら記事を書いているやつ』だとはねつけた。しかし、最後には、パジャマ姿でくつろいでいる人物によって、Rather氏とそのプロデューサーは辞任に追い込まれた」(Murdoch氏)
Murdoch氏は続けて、「Rather氏と彼の擁護者だけではない。最近の米国の調査によれば、多くの編集者や記者は読者が適切な判断を下せると思っていないという。つまり、このことが意味するものを明らかにすると、こういった編集者や記者は彼らの読者は愚かで、自分で考えることができないと婉曲的に言っているということだ」と述べた。
印刷およびオンラインの両方の報道機関で、メディアの見通しがますます暗くなっているように思われるときに、Murdoch氏はこのようにコメントした。Goldman Sachsの最近の報告では、自動車や金融業界の低迷により、広告への圧力は今後も続くだろうと予測されている。同様に、インターネットも影響を受けている。米国時間11月14日、TheStreet.comはサンフランシスコ事務所を閉鎖した。
しかし、そういった欠点にもかかわらず、Murdoch氏は、「新聞が読者に信頼できるニュースを提供できれば」今でも発行部数を伸ばすことができると述べた。また、RSSフィードやターゲットメールなどの最新技術を取り入れる必要があると付け加えた。Murdoch氏によれば、課題は、「新聞のブランドを使いながら、読者が自分でニュースを選び、好きな方法で配信してもらえるようにする」ことだという。
「新聞、あるいは非常に近い存在である電子新聞は、これからも存在し続けるだろう。現在のように、玄関先に投げられることはないかもしれない。しかし、届いたときの音は今後も社会や世界中にこだまし続けるだろう」(Murdoch氏)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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