バイノーラル録音というのは、ざっくり言えば、耳の穴に仕込んだマイクが拾った音を耳の穴に仕込んだヘッドホンで聞く方式の録音再生方法のことだ。
最終的に聞くのは耳の穴を通してだから、まさにそこで音を拾えばいいじゃんということだと理解している。
実際には体の他の部分が感じる振動や音圧というものもあるだろうし、録音時の耳の形状や間隔と再生時のそれとが必ずしも一致しないわけだが、いくつもスピーカーを並べたり、あるいはそれ専用のヘッドホンを用意したりしないと聞くことの出来ないサラウンドに比べると、聞く方のハード面の敷居の低い点は非常に魅力だ。
何しろ、聞くときに用意するのは普通のカナル型のイヤホンだけだ。
ゴタクはいいから、とにかくヘッドホンを用意してこの音を聞いてみてほしい。
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/36/BinauralPaper.ogg
説明に続いて、紙をひらひらさせる音、紙をくしゃくしゃする音、最後に耳元でささやく音が順に再生されるはずだ。ちょっと耳障りなほど臨場感がある。
あるいは、松本さんのブログでは、バイノーラル録音用のマイクの自作記事の中でサンプル音を聞くことが出来る。
http://portal.nifty.com/2007/06/20/c/
こちらは、マッチ箱を振る音や、野外での録音の例がいくつか聞ける。
マイクの自作も非常に興味をそそる記事だが、ここでは、5.1chサラウンドの再生時のハードウェア的な敷居の高さはバイノーラルで解決できるんじゃないの?という思いに話を絞る。
世の中にはきっと、ソフトウェア的に5.1chサラウンド用の音に細工してバイノーラル用に変換するようなことをやる人がいるはずだ。
いた。
いろいろさまよって、目に入ってきたのは DH Wrapper VST だ。
http://sites.google.com/site/tastymousakas/
Overview:
“DH Wrapper” is a VST plug-in that processes 5.1 surround sound content and outputs 2 channel binaural signals. The result is, surround sound through headphones. “DH” stands for “Dolby Headphones” as this VST plug-in wraps the functionality of the “DOLBYHPH.DLL” file installed with software DVD players. In fact, even the demo version of WinDVD installs a fully working version of the needed DLL file.
必要なものをもらってきて組み込んで、まず使い慣れた(ていうか、これしか知らないし。) Audacity で試してみたら、
これが、
こうなった。
だめじゃん。ちゃんと設定はできてるつもりなんだけどなあ。いくらチェックしてもだめだった。
次に目に入ってきたのが REAPER というソフトだ。
http://www.reaper.fm/
残念ながら30日の期限付きの商用ソフトだ。まだ購入予定ではないので詳しくは調べていないが$20か$225の2通りの購入プランがある。
こちらは、試したらうまくいったような結果が得られたので手順をちゃんと書く。
1.5.1chサラウンドの音データをWAV形式で用意する。
私の場合は花火大会の映像を販売しているサイトのサンプル映像を拝借し、TMPGEnc Video Mastering Works で音声だけを切り出した。
動画を直接読み込ませるとこうなって、音声を2chしか認識してくれなかった。
切り出したwavを読み込むとこうだ。もちろん、このように6チャンネルちゃんと表示されるのが正しい。
2.上のサイトで DH Wrapper VST をいただいてきて、
Installation:
First place “DHWrap.dll” in the folder where your VST host reads VST plug-ins from. Then you need find the “DOLBYHPH.DLL” file installed in your system, make a copy of it, and place the copy in your “System32” folder.
にあるとおりプラグインフォルダに放り込む。私の環境(Windows 7 Pro 64BIT)では、C:Program FilesREAPER (x64)PluginsFX 以下に置いた。
3.DolbyHph.dll を探してきてC:WindowsSysWOW64 に放り込む。
DH Wrapper VST の説明には WinDVD のデモバージョンでインストールされるヤツでもちゃんと動くよ、と書いてあるが、検索したらすぐ見つかったのでそのものを使った。
4.REAPER を実行する。
試用期間なので待たされて、
試用を続けますよをクリックする。
5.切り出した WAV をドロップして、FX をクリックする。
6.VST > DH Wrapper を選んでから OK をクリックする。
7.もう一つ窓が開くので、部屋の広さと、チャンネルの割り当てを設定する。
チャンネルの設定には自信が無いが、左、右、両方、両方、左、右、だよなあ、きっと。
8.レンダリングを実行する。
今回は設定は何も変更しなかった。出力先とファイル名だけを変更して実行。
せっかくなので、元の動画に変換した音を組み合わせてエンコードしたものを視聴してみた。
もとのファイルを5.1chサラウンドに対応していない環境で再生したのと比べると明らかに空間の広がりが感じられる。頭の中だけで花火が打ち上がっている感じだったものが、確かに下から上がっていって上空で炸裂したように聞こえる。
残念ながら5.1ch環境が無いので肝心な比較は出来ないが、変換するとなにがしかの臨場感が増すこととだけは確かだ。
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