Sahara's WebLog

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秋月目線で比較するPICとAVR

ヘリクツよりまず実践という方はここを飛ばしてこちら「もし、これからPICを始めるなら、まず何をそろえる?(電子工作初心者のPIC入門準備編)」

あるいは最初から32bitを使うことにしてこちらでPIC32とMCCで簡単Lチカから始めましょう。


追記(2016/01/20)
とうとうMicrochipがAtmelを買収したようです。
microchip_acquires_atmel
PICと競合する範囲のAVRは無くなるでしょうね。


この記事の結論
PICとAVRを比較した記事を参考にするなら、まず書かれた日付を確認し、古いものや日付が特定できない場合は無視せよ。
AVRの方が優れていると勘違いしている記事は、Microchipはディスコン(※2)にしない方針だという点を逆手に取って、古いPICと新しいAVRを比較している。
後発のAVRがPICの尻を見て欠点を改良したものを投入する(※1)。
ところが、PICは古いチップも市場から無くさない方針なのだから、その古いPICと新しいAVRとを比較した場合にPICの方が劣るのは当然のこと。
PICにダメ出しをする記事は間違いなくこの手合いだ。
最低でもPIC16F1系以降で比較して欲しいものだが、それではAVRの優位性が全く示せなくなるだろう。


以下、やっと本文。


電子工作といえば子供の頃に作った秋月のキットがはじまりという懐古趣味と、品揃えに入ってさえいれば確実に他店より安いという経験から、最近ももっぱら電子部品は秋月電子で購入することが多い。
これいいなと思っても秋月に無かったからやめたという消極的な場合も多い。
そこで、秋月電子で購入することをとっかかりとしたPICとAVRの比較をやってみる。
そもそもPICかAVRかを秋月の取り扱い数を見て決めたという経緯があるくらいなので、決して公平な比較とはならない点を断っておく。

PIC16F1827の価格を色々な通販ショップで比べてみた。
共立エレショップ¥340
秋月電子通商¥135
RS¥173
マルツ¥260
ミスミ¥206
(2016/10/02 価格更新)

それぞれのカテゴリー内の取り扱い商品数
PIC
一応213件となっているが、カテゴリー内を掘って実際に総数を数えて確認する気にはならないほど多数(PIC単体で187件 2016/09/16)。
akitsuki pic
AVR
全部数えたら30件だった(AVR単体で31件 2016/09/16)。数える気になるオーダー。
akitsuki avr
数が多けりゃいいってわけじゃない。
AVRの方が迷わずに選べて、部品箱の肥やしになるチップの数も減らせそう。
そもそもAtmelとMicrochipとでは古いチップについての方針が違うらしい。
Microchipは古くなったICでも生産を終了しないんだって。
だから、PICの品数が多いのもうなずけるし、AVRの方がチップ選びで迷わなくてすむ。
もっとも、AVRでは参考にしようとしたICがもう入手できないってなことになっちゃう可能性もあるわけで、PICではそういう心配は無い。
確実に言えることは、秋月がPICの取り扱いをやめるような素振りすら皆無だということ。
「PIC AVR 比較」とかで検索して引っかかるAVRびいきな5年以上も前のネガティブ記事が方向として間違っていたかどうかは別にして、誰もその呼びかけに同調しなかったことだけは明らか。

純正のライター
PIC PICkit 3 5700円(2016/11/25) 3割以上高いが、赤くてかっこいい。
M-03608
AVR AVRISPmkII 3800円(2015/10/02 ) 安くて実直な感じ。この無骨なフラットケーブルが、実は耐久性に乏しくてネックになってる、てな意見もちらほら目にする。(※3)
Atmel-ICE-Basic 7000円(2016/11/25) 白くてすっきりした感じ。
atmel_ice_basic
AVRの方が初期投資が少なくて済む的な意見は確かに正しいが、たかだか1000円程度のこと。
どうしてもと言うなら、純正品とほとんど違いのないをお安く手に入れるという手もある。
送料込み1000円台で購入可能なので、検討の余地は十分ある。
私は純正品との両方を持っているが、機能的な違いは判らない。
むしろ、の方ばかり使っている。
純正のライターが充実していない頃の記事で「AVRのライターは安く作れるという優位性がある」とかいう内容も見かけるが、普通にメーカー純正品やそのクローンを使う時代になった今となってはあまり意味がない。

秋月で買える一番速いヤツ( 2014/04/04 追記 ここから )
PIC
PIC32MX250F128B 50MHz 83DMIPS 360円
I-07644
AVR
AT32UC3B064 60MHz 83DMIPS 620円
I-07023
一応、たとえばAVRはAtmelのサイトでクロック数で絞り込んだリストから秋月にあるやつを選び出したし、PICの方は32bitのものから選んでこれが最速かなと思ったやつなんだが、もしかしたら、こっちの方がもっと速いじゃんってのがあるかもしれない。
ただ、DMIPS値にするとどちらも大して変わらない。
お分かりと思うが、AVRの方は速くてお手軽なDIPパッケージというのが無いし、少々お高いのに対して、PICは素人に優しいDIPパッケージなのに高性能で、値段も安い。
データシートを斜めに読んだ限りで、たとえば素人が避けては通れないAD変換の性能は、AVRは384ks/s、PICは1.1Mspsすなわち1100ks/sだ。
ちなみに、秋月目線という趣旨から外れるが、PIC最速は
PIC32MX470F512L 100 MHz/131 DMIPS
AVR最速は
AT32UC3A3256S 84 MHz/126 DMIPS
となっている。
このレベルで最速を比較してもあんまり意味無いとは思うが、素人目にはPICの勝ちだ。
秋月目線に戻って手軽に高性能という初心者に優しいのはどっちかということならPICに軍配を上げても異論は無いと思う。( 2014/04/04 追記 ここまで )

秋月での人気順( 2015/02/14 追記 ここから )
そういえば、秋月での人気順を載せていなかった。
「マイコン」で検索して「人気順」にすればマイコン関連の商品が売れ筋順に表示される
PICとAVRに限って人気ランキング順に拾ってみた。

30個中AVRは4つランキング入りしている。
4つしかランキングに入っていないのにトップテンには1つも入っていない。
一番上位のものでもランクは11位だ。
26個もランクに入っているPICでは票がバラけて1つあたりの得票数は減るはずで、逆にAVRは1つに票が集中してランクを押し上げるはずなのに、それでもAVRの順位の方が低いのはどういうことだろう。
もちろん、取り扱いの始まったのが古ければ上に来るわけだから単純に判断は出来ない。
だが、ATMEGA328P-PUの発売日は2009/10/05、ATTINY2313-20PUの発売日は2006/10/05、PIC16F1827-I/Pの発売日は2011/01/14で、人気はこの順だ。
つまり4年以上も後発のPIC16F1827がもうすぐうしろにつけて追い上げてきているという状況。( 2015/02/14 追記 ここまで )
秋月マイコン人気ランキング」に最近のランキングの推移を書いた。( 2015/09/17 追記 )

この比較シリーズ、気がつけば追加していくつもりだが、総じて言えることは、PICネガティブな記事については書かれたのがいつ頃なのか必ず確認した方がいいということ。
現状に即していない古い記事にしかお目にかからないという点で、現在でも結局PIC優位なのかと結論してしまう逆の根拠になる気がする。

参考までにGoogleで「PIC AVR 比較」で検索した結果を書いてみる。
いますぐPICをやめてAVRに移行すべき10の理由
必ずトップに出てくる記事だが、2008年2月のもので、現状にはまったく即していない。特に、いまだにこれを引用してAVRを推す記事には「馬鹿め」と言ってやりたい。
(2015/06/17 以下を追記 下の方まで見てなかったので)
ちなみに、下の方でのやり取りではこう書かれている。

SYO 2010/02/26 15:18
つPIC24F,PIC24H,DSPIC30F,DSPIC33F
このファミリーとAVRの比較をやってみましたか?
こいつらは16ビットで、24Fシリーズは16MIPS、30Fシリーズは30MIPS、24Hシリーズ、33Fシリーズは40MIPSと高速かつ、ハードウェア乗算機を持っています。
さらに、DSPICシリーズはその名の通りdspを内蔵しています。
AD変換も高速です。(500ksps、1Msps)
Cも当然使用可能でgccベースのC30コンパイラーを使用しますが、
無償版でも製品版に近いレベルで最適化がかかりますし、最適化なしでもAVRのCコンパイラ(製品版)が最適化を最大限かけて吐き出すコードと大差ないサイズです。
最適化をかければサイズは遥かに小さくなります。
ここで言われているI/O周りの問題も既に解決済みです。
ライタもUSB接続可能な純正のPickit2が3500円(秋月)で販売されてます。

yaneurao 2010/02/26 15:34
PIC24以降のものは私は使ったことがありません。
私が電子工作で必要となるのは、たいてい一番下位のシリーズでして、PIC12Fとか16Fとかです。
その2つのシリーズに対するまともなCコンパイラが提供されていないのが最大のネックだと私は考えています。
上位シリーズに関しては、PICのほうがAVRより性能は上だという話は聞きます。
また私がこの記事を書いたときには、PICkit 2は秋月で販売されてませんでした。
いまなら、ライターは、PICKit 2があるので問題はないのかも知れません。
あとはPICでもICEでのデバッグが安価で出来ると良いのですが。

つまり、2年後に主な主張はすべて書いた本人が自分で否定している
ちなみに、現在では、コンパイラもデバッグ環境も無料で全く遜色の無いものが提供されている。
余談ながら、ちょっと英語を読み書きできれば、MicrochipはPICそのものも無料でサンプルをくれるので、PICkit 3への投資はすぐに取り戻せる。
逆にAtmelは一般人にはサンプルをくれない。
atmel_sample_email
やりようはいくらもあるようだが、特に必要を感じないので試したことは無く、なんかAtmelってセコイなというイメージだけを持っている。
(2015/06/17 追記ここまで)
PICとAVRってどこがどう違うんですか?
2012年8月の知恵袋だが、PICを推す回答になっている。
PIC or AVR 今マイコンを始めるならどっち?
2012年3月の2chの過去ログで、2chなので、特に有意な結論には達していない。ちなみに「PIC or AVR 今マイコンを始めるならどっち?★2」が埋まって次スレは立っていない。
Electro-ワンチップマイコン
どちらかというとAVR推しの記事でAVR導入の手順が書かれているが、内容はかなり古いもの。この手の記事なのに書かれた日時が不明な場合は資料としての価値が無いも同然だ。
ATMEL AVRで遊ぶ – PICを捨ててAVRを使おう
いつ書かれた記事かはっきりしない。
タイトルどおりにAVR推しだが、その後も更新されているのか、書き出しではPICを否定していたのに、記述の後半に以前の内容を否定する文が続くパターンが多い。
これはAVR推しの典型的な展開なのであえていくつか引用しておくと

AVRの AT90S1200-12は、PICの PIC16F84A-20/Pよりも安いです。残念ながらAT90S2313-10はPIC16F84A-20/Pとあまり値段が変わらなくなってしまいました。

AVRはPICより安いから良いのだと書いておきながら、その後にすぐこういう自己否定な内容が続くなど、ホントはどっちなのかと疑わざるを得ない書き方だ。
ちなみに現状でPIC16F84Aは300円(2016/11/25)だが、上位の互換チップであるPIC16F1827は135円(2016/11/25)で比較にならないほど高機能化されており、最もお勧めできるチップの1つだ。
現在は135円で売ってるものに高いだの安いだのという議論が今となっては無意味なのは明らかだ。

1命令4サイクルかかるPICと違い、AVRは(大部分の命令が)1命令1サイクルです。 なのでAVRは同クロックのPICの4倍速いことになります。でも最近は、50MHzで動く高速PIC互換チップも出てきたので、価格に糸目をつけなければ速度に対するメリットはそんなにないかもしれません。

「金に糸目をつけない」のがいくら以上のことを想定していたのか分からないが、現在最高クロックが40MHzのPIC32MX220F032Bは250円(2015/06/17)で買える。ちなみに、PIC24F系とdsPIC33F系は2クロックサイクルで1命令を実行する。

プログラミングしやすい…インタプリタやコンパイラを使わずにアセンブラでプログラミングしている場合、この良さを体験すればPICは捨てたくなるでしょう。

申し訳ないが、アセンブラでプログラミングなんて大昔にちょっとかじっただけで、PICではやったことないしする気も無いので、面倒はコンパイラ任せと決めている。
なので、よく書かれているこういう欠点が今ではどれほどの意味をもつのか理解できない。
入門者には「Lチカ」しながらC言語の真似事を楽しむ道をお勧めする。
もちろん、ぜひアセンブラをやってみたいという酔狂な方の意欲を否定する気は毛頭無いが。

PICにはプログラムが一度しか書き込みができないROM(WO-ROM)をもつものが あります。AVRは全種類FLASH ROMを搭載しているので、1000回程度まで プログラムが書き換えできます。

もうこうなると揚げ足取りとしか思えず、同様に論理性を欠いた記述が続くだけのような気がしてこの後を読む気にもならない。
品揃えの中に不便な仕様のものがある(Microchipはディスコン(廃盤、生産中止)にしない主義なので当然)から全体もだめだという理論は良く分からない。不要なら選ばなきゃいいだけのことだし、必要な人には必要なチップなのだから。
この調子で尻すぼみになりつつも「ではAVRを使う準備をしましょう。」的な唐突な展開になっていく。
PIC を使ってみた
2012年9月の記事で、ここまできてやっとまともな記事に巡り会えた気がする読む意味のある記事だ。内容的にはAVR推しなんだが、ちゃんと両方試してみての記事だから嫌味がなく、PICの欠点も納得できる書かれ方になっている。
「AVRは”高級マイコン”、PICは”大衆マイコン”である。」は名言だと思う。

結論
PICとAVRを比較した記事を参考にするなら、まず書かれた日付を確認し、古いものや日付が特定できない場合は無視せよ。
AVRの方が優れていると勘違いしている記事は、Microchipはディスコン(※2)にしない方針だという点を逆手に取って、古いPICと新しいAVRを比較している。
後発のAVRがPICの尻を見て欠点を改良したものを投入する(※1)。
ところが、PICは古いチップも市場から無くさない方針なのだから、その古いPICと新しいAVRとを比較した場合にPICの方が劣るのは当然のこと。
PICにダメ出しをする記事は間違いなくこの手合いだ。
最低でもPIC16F1系以降で比較して欲しいものだが、それではAVRの優位性が全く示せなくなるだろう。

すっかりPICを始める気になったらこちらへ
もし、これからPICを始めるなら、まず何をそろえる?
一押しのPIC16F1827(古いチップの問題点は解決済み)に特化した作例も載せてます。


追記(2014/04/04)
だらだら長くなったので結論だけ先に書いとく。
追記(2014/06/04)
巷に溢れる玉石混交な情報を時系列で把握することの必要性を問うのが目的で、比較はするけど優劣をつけるのが目的ではないので、PICかAVRかどっちにしようか迷ってる方の参考にはなりません。
追記(2015/06/17)
円安でどんどん値上げされるので価格を変更し、ついでに少し加筆
Atmelが売却を検討か」というニュースもある。
AVR自体が無くなる可能性もある?
追記(2015/09/22)
とうとうAtmelがDialog Semiconductorという会社に買収された。
こちらがそのDialog Semiconductorのリリース
こちらがAtmelのリリース
atmel_acquiered
AVRがどうなるかとかは一切不明。
追記(2015/12/22)
Microchip、Atmelに38億ドルで対抗買収を提案
AVRは本当に無くなるかもです。
追記(2016/01/19)
Dialogとの合意は破棄の可能性も:Atmelの買収、Microchipが優勢か
AVR終了のカウントダウンが始まったって感じです。


(※1)PIC16F84Aは1998/9でATtiny26は2003/2。ちなみにPIC16F84Aのmicrochip DIRECTでの在庫は今でも当然「有り」だが、ATtiny26のAtmelストアでの在庫はすでにゼロ。
(※2)ディスコン:discontinuedの短縮語。工業製品の製造中止や販売終了のこと。あるパーツがディスコンになった場合、組み込み先で不具合が生じると設計段階からの刷新が必要となって時間的にもコスト的にも負担が大きいが、ディスコンにならずにパーツが供給されればそのパーツだけを交換すれば済む。
(※3)2016/11/24現在、秋月での取り扱いが無くなった。Atmelストアでも在庫ゼロの状態となっていて生産終了のようだ。

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Posted under: PIC その他, これから始めるなら


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